嫌われる勇気

 2013年に一世を風靡したビジネス本

一時期、いつも書店で平積みされていたと記憶している。

 

アドラー心理学を、

悩める青年と哲人との対話形式で解説している一冊となっており、

テーマは「どうすれば人は幸せに生きることができるか」ということへの解

 

自分はなぜ働いているのか、

働いて何につながるのか、幸せになれるのか。

働くこと、生きることに悩んでいる方に送りたい一冊

 

対話形式だが、内容が進むほど、難しい内容となっているので、

自分の状況・背景に照し合せて、理解を深めてほしい。

 

タイトルが「嫌われる勇気」であるが、

人に好かれる好かれないということは無関係で、

気にしてはいけないということが主旨なので、

ミスリーディングに陥りやすく気を付けていただきたい。

 

 

 

 

 

 

トラウマを否定せよ

アドラー心理学は勇気の心理学である。

人はだれしも幸せになることができるが、

変わることができない人には、「幸せになる勇気」が足りていないということである。

「幸せになる勇気」とは何であるかは、

「自分自身が変わる勇気」とも言える。

 

われわれは自分の主観で世界を複雑に見ており、

トラウマや過去の失敗経験を原因として、

自分の今の境遇を決めつけてしまっている場合が多い。

 

例えば、「昔、人前で大きな恥をかいてしまったから、

それ以降、リーダーシップを発揮できなくなってしまった」等である。

 

大前提として、「ひとは変われる」ことを忘れてはいけない。

 

われわれが変われずにいるのは、

わたし自身が「変わらない」ということを決心しており、

新しいライフスタイルを選ぶ勇気が足りないせいなのだ。

 

重要なキーワードとしては、

「これまでの人生に何があったとしても、

今後の人生をどう生きるかについては何の影響もない」ことに気づくこと。

 

すべての悩みは対人関係

自分のことが嫌いな人は多い。

その「自己評価の低さ」はどこから来るのか。

 

アドラー心理学では、

わたし自身が「自分を好きにならないでおこう」と決心していると解説する。

その目的とは、「他社から嫌われ、対人関係で傷つかないため」である。

 

また、「もし、自分が〇〇だったなら、幸せな人生だったろうに」と考える人は、

なにかチャレンジすることを恐れており、

「もし」という失敗のない可能性の中で生きることで、

自分を守ろうとしているのだと理解できる。

 

アドラー心理学では、「すべての悩みは対人関係から発生している」と説く。

我々はだれしも何かしらの劣等感を感じており、

劣等感を言い訳に、自分の不幸を決めつけてしまいがちである。

また、劣等感を隠そうと、自慢で自分自身を塗りつぶしている人もいる。

 

正しい競争相手は自分自身であり、

劣等感を感じるべきなのは「理想の自分」に対してである。

他者の誰かではなく、自分を見つめなおすことで、向上する努力を続ける。

 

「他者は敵ではなく、味方だ」ということを認識しなおすことで、

世界の見え方も変わってくる。

 

他者の課題を切り捨てる

アドラー心理学では、「承認欲求」は否定される。

我々は、誰かに認めてもらうために生きているわけでもないし、

他者もまた私たちのために生きているわけでもない。

 

私は私のために生きているのであり、

他者は他者自身のために生きている。

それゆえ、他社の課題に土足で踏み込む、介入することは認められない。

 

例えば、親が子供に対し、

勉強しろ、宿題しろというのは、

子供のために言っているのではなく、

親自身のためにやらせようとしている場合もある。

子供は親の気持ちを察し、余計に反発してしまう。

 

「自分を変えることができるのは、自分しかいない」と改めて理解するべき。

 

そのうえで、「課題の分離」という考え方を理解することが肝である。

 

先述の、子供の勉強を例にとると、

子供が勉強しないことによる結果は、子供自身の課題であり、親は無関係。

親が怒りを感じたとしても、その怒りの対処は親自身が解決しなければならない。

 

自分の課題は自分のもの、相手の課題は相手のもの。

これを課題の分離という。

 

課題をうまく分離することができず、一緒くたにすると、

先ほどの子供の例のように、

相手に怒られたくない、嫌われたくないという気持ちが強くなる。

 

相手の気持ちを考え、誰からも嫌われたくないと振る舞うことは、

結果として破綻し、

自分自身にウソをつき、

周囲にもウソをつき続ける生き方となってしまう。

 

 

本当の幸せとは、他社の評価を気にせず、

他者から嫌われることを恐れず、

承認されないかもというコストをかけて、

自分の生き方を貫くことである。

 

当書のタイトルでもある、「嫌われる勇気」をもつことなのだ。

 

世界の中心はどこにあるか

課題を分離することは対人関係の出発点であり、

対人関係のゴールは共同体感覚を持つことである。

 

つまり、他者を仲間だとみなし、

共同体の中に「自分の居場所がある」と感じられることである。

 

私は確かに私の人生の中心であるが、共同体の一部でしかない。

共同体に対し、積極的にコミットすること。

自分が相手に何を与えられるかを考えることで、

共同体への所属感を獲得することができるようになる。

 

私たちは共同体にコミットしながら、

人間関係を「横の関係」として捉える必要がある。

「縦の関係」とは、上下関係や劣等感をうむ関係である。

縦の関係でとらえる限り、決して幸せにはなれない。

 

そのため、褒めることも叱ることも認められない。

褒めることは上のものが能力のないものを認めることに他ならず、

「縦の関係」を構築しようとしているのだと理解しよう。

 

 

相手を褒めるのではなく、「勇気づけ」すること

具体的には感謝をつげることで、横の関係が出来てくる。

 

褒めるのでも叱るのでもない。

対等な関係として、相手を勇気づける。感謝を告げる。

 

「いま、ここ」を真剣に生きる

幸せな人生を送るために何が必要か。

アドラー心理学では、3つが必要だとしている。

私たちは、交換不可能な「私自身」をありのままに受け入れる自己受容と、

対人関係に懐疑を置かず、無条件に信頼する他者信頼をもつ必要がある。

そして、3つ目であるが、人生において最も重要な、他者貢献である。

 

他者貢献とは、実際にどれくらい貢献したかは関係がない。

それは他者の課題であるからだ。

「わたしは誰かの役に立てている」と自分で思えた時だけ、

自らの価値を実感することができ、

人生において幸福感を感じることができるようになる。

 

 

人生それ自身に何の意味はない。

人生の意味は、自分が自分自身に与えるものである。

 

 

自由な人生、幸せな人生を送り続けるため、

道に迷わないよう、「導きの星」を掲げることが重要。

 

つまり、「他者に貢献するのだ」という気持ち、方針を大原則として掲げること

北極星のように、道しるべとして掲げることである。

 

方針を失わなければ、人生に迷うこともないし、基本的に何しても良い。

嫌われる人には嫌われるが、それは他者の課題でしかないので、気にする必要はない。

 

他者に貢献するという気持ちを持ち続け、

共同体感覚を持つことが対人関係のゴールである。

 

すべての悩みのもとである対人関係がうまくいけば

幸せな人生を送ることができるということだ。

 

わたしはわたし自身にしか変えられないが、

裏を返してしまうと、変えようと思えば、

今日から、今この瞬間から自分自身を変えることができる。

 

 

以上が、「嫌われる勇気」の概要である。

 

腑に落ちない点、納得できない点があれば、

是非、当書にでてくる青年と哲人との対話に目を通していただきたい。

青年も、哲人の発言を詭弁と評し、白熱した議論を交わしている。

それだけ、簡単には理解しきれない内容であるが、

理解したときには、すべてがうまくいくような気持ちになれるであろう。