ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略

 マーケティングの名著のうちの一つ

 

マスマーケティングから、

顧客マーケティングへの移行を考えるうえで

重要な学びを与えてくれる。

 

1995年に発刊されているが、

インターネットが発達した後の状況を

正確に予知したうえで論じられている。

 

 

本書の内容に加え、

現在の状況も含めてレビューしていく。

 

 

 

 

 目次

 

シェアの基準を市場から顧客へ向けること

テクノロジーは進化し続けている。

テクノロジーは我々の生活を、

予想もつかない方向へ進化させてきた。

 

自動車の登場により、

郊外に住むことが苦ではなくなり、

それにより郊外に商圏が発生した。

 

駅前マーケットを奪ってしまったことは

すぐ思い浮かべられるだろう。

 

インターネットの発展により、

購買活動に居住地域が関係なくなってきているのもわかる。

 

また、2020年現在では、

前代未聞の新型コロナウイルス危機により、

よりリモートのテクノロジーが進化している。

 

都市部、地方部の境界がなくなってきており、

より一層、我々は場所に囚われなくなっているのかもしれない。

 

大きな社会変動が発生し続けており、

われわれはテクノロジーを活用しながら、

顧客一人一人にアプローチしていくことが重要になってきている。

 

そして、アプローチの結果、ひとりの顧客に、

長い期間、自社商品を購入してもらうことだ。

 

そのために必要な手法としては、

「ひとりひとりの顧客について深く知るということ」だが、

前近代では当たり前のことであった。

 

例えば、むかしの商店街の八百屋は、

顧客の人間関係や、趣味嗜好、家族構成まで

ひとり一人のお客様についてよく把握していた。

 

しかし、商圏が広がり、マス広告のコストも下がったため、

ひとり一人を詳しく知るよりも、

とりあえず売るということが重要視されてしまった。

 

現代では、広告による情報量が増えているがため、

会員としての購買情報や、他社での購買履歴や、

SNSなどでの情報収集など、

様々な手段を用いて、顧客の情報を集め、

より深く知ることが大事になる。

 

 

顧客は企業とともにブランドを作っていく

一般的に、既存顧客からの売り上げと比べ、

新規顧客からの売り上げには、5倍のコストがかかるといわれる。

 

 プロモーションごとに、

大量の広告をばらまき続ける限り、

消費者は割引クーポンや、価格比較で感覚がマヒしていく。

マス広告を実施するほど、

企業側はディスカウントが必要となりジリ貧になる。

 

大事なのは、顧客と協働し、ブランド価値を作り出していくこと。

お客様への定期的なアンケート実施など、

不満や苦情を収集しやすい仕組みを作ることが重要だ。

 

ちなみにであるが、

「顧客との協働」については、

コトラーマーケティング3.0の世界でも語られており、

無視できない重要なファクターだといえるだろう。

 

biz-book-review.hatenablog.com

 

プロダクトアウトから顧客ファーストへ

企業にとって、最高の顧客とは、

企業の商品・サービスに満足しており、

自分の周り(友人や同僚たち)にもサービスを紹介する顧客だ。

 

こういった顧客を増やしていくには、

顧客に企業への影響力を付与し、

貢献した顧客に対しては報酬を与えることである。

報酬は必ずしも金銭的報酬である必要はない。

 

また、より一層、

ひとり一人の顧客を深く理解していることで、

大量生産・大量消費の戦略から抜け出ることが可能となる。

これを、規模の経済に対し、範囲の経済と呼ぶ

 

すべての顧客を追いかける必要はない。

顧客を分類し、自社と協働してくれる顧客を大事にすることだ。

 

顧客と関わっていくこと

企業から顧客に対して、

メッセージを発信することはいくらでも可能である。

 

ダイレクトメールや、TV広告等

さまざまな手段でリーチできる一方で、

お客様からの声を拾い上げる仕組みは

なかなか存在しないのが現状だ。

 

インターネットやSNSが主流となっている現代では、

顧客による発信は今まで以上に可能であるので、

うまく顧客と協働できるよう仕組み化するとよい。

 

例えば、Twitterやインスタ等、

読者投稿企画を募集するなど、

企業との相互的なやり取りが盛んになってきている。

 

従来は、企業からの一方的な発信だけであったが、

いまでは、顧客が発信し、企業がメッセージを受け止め対応する時代なのだ。

 

なお、勿論のこと、

顧客との対話は、

企業が顧客から信頼されて初めて成り立つため、

その情報が漏洩してしまうと、信頼は完全に失われてしまう。

 

 

昨今、Youtube等のプラットフォームでは、

インフルエンサーと呼ばれる消費者が、

企業の商品・サービスをレビューし、

ほかの消費者に対し、レコメンドしている。

 

企業によっては、

いかにインフルエンサーに自社製品をPRしてもらおうかと、

躍起になっている企業もあるかもしれない。

 

インフルエンサーへの報酬は

広告収入という金銭的なものであるが、

企業はインフルエンサーに対しても、

その先の消費者に対しても、

相互的なコミュニケーションをとっていくことが、

今後の成功のカギになる。