ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

よなよなエールで有名な、

ヤッホーブルーイング。

 

いまでこそ、有名なクラフトビール会社になったが、

創業時代の苦労や、地ビールブームの到来と終焉、

どん底からのチームビルディングなど、

様々な経験を経て、成功を収めてきた。

 

代表取締役の井手氏のエピソードを紐解きながら、

「同じ方向を向いているチームを作ること」や、

「ファンであるお客様とともに歩み続けるということ」を学びたい。

 

この書籍から学んだことは予想以上に多かった。

マーケティングという話にとどまらず、

働くこととは何か、自分らしさとは何かを考えさせられる一冊である。

 

よなよなエールを飲んだことが無い方にこそ読んでほしいと思っている。

 

 

 

 

 

 

自分事として捉えること

井手氏は、冒頭にショッキングなエピソードを語っている。

地ビールブームが去り、販売が下火になっていた時、

大手コンビニでよなよなエールを取り扱ってくれることになった。

 

コンビニと付き合うことは、

チャンスでもあるがリスクも大きい。

棚を開けてくれている以上、絶対に欠品が許されない。

 

出荷後、よなよなエールは大量生産体制に入った。

その期待とは裏腹に、全く売れなかったという。

しかし、生産は止められない。

その結果、在庫だけを抱えることになってしまった。

 

ビールは酒税がかかるため、

売れないビールはすべて廃棄するしかなかった。

 

本文中の以下の表現が、胸に突き刺さるし、

井手氏にとって大きな出来事だったことが窺える。

美しく有れと願ってデザインされた缶。(中略)

それがやっと注がれ泡立ったと思ったら、

そこはグラスではなく、排水溝だったのです。

 

井手氏は当時を振り返り、

そんなショッキングな出来事も、

当時はどこか「他人事」として受け止めていたことを後悔しているようだった。

 

自分が何を得意とするか理解すること

井手氏は、星野リゾートの星野氏と出会うまで、

さまざまな職を転々としていた。

 

自分の進むべき道が見えない中、様々な経験を通じて、

自身が自然が好きなことや、

人と触れ合い、喜んでもらうことが好きだということに気がついていった。

 

自分が、自分の望む道にたどり着くには、

節目節目で自問自答することが大切である。

 

自分が好きなことは何であるか、

自分が楽しいと感じることは何なのか。

 

自問自答することで、自分の性質、気質が分かるようになったとのことだ。

 

 

まずは自分がファンになるということ

よなよなエールはこだわりのあるビールである。

井手氏が初めて飲み、自分自身がファンになったとのこと。

 

どの業界でも、市場に新規参入するときには、

自分たちがどう進んでいいかわからないものだ。

 

そうすると、どうしても市場のルールに沿ってしまいがちだ。

つまり、既定路線に追従しようとしてしまう。

 

例えば、商品のネーミング、デザイン、価格など、

大手企業のものと比較しながら決めようとするだろう。

 

しかし、新規参入者が、今のルール、固定観念にとらわれても、

先駆者たちに勝てるはずがない。

 

あらゆる場面で新規性が高くなければ、

とがったものでなければ、お客様から相手にもしてもらえないのである。

 

今までの固定観念を振り払い、自分たちらしさを貫くためには、

「まずは自分が第一のファンであること」が大事ではないだろうか。

 

 

仕事に人生を賭けること

一時期の地ビールブームも消え去り、

ヤッホーブルーイングを含み、

クラフトビール業界は完全に下火になってしまった。

 

業績が悪くなると、会社の雰囲気が悪くなっていった。

売上が悪くなると、目線も下向きになる。

 

いるはずもない犯人探しも始まる。

今までの自分たちのこだわりが間違っていたんじゃないかと疑い始める。

営業が貢献できていないからと責任を擦り付けてしまう。

 

ヤッホーブルーイングの会社の雰囲気はとても悪かったという。

いままで一緒に頑張ってきた仲間たちも去っていった。

 

どん底どん底まで落ちて、藁をもすがる気持ちで、

井手氏は星野氏に相談した。

 

このどん底に落ちても、

まだ成功する可能性を信じている星野氏の言葉に打たれた。

 

自分が決めたことはやり遂げるという星野氏の言葉に打たれ、

井手氏は仕事に人生を賭けてみようと、本気で思ったのである。

 

大切なことを見失わないこと

井手氏は命を懸けてヤッホーブルーイングに向き合うことにした。

そのためにいろいろなことにチャレンジした。

 

勿論、うまくいくかどうかはわからない。

 

たとえ失敗したときもめげずに、

「それはちょうどいい」と前向きに考えるようにし、

足だけは止めないようにしていた。

 

そのなかでも、「自分たちらしさを失わないこと」

これは守っていたように思える。

 

自分たちらしさを見失わず、

よなよなエールの熱狂的なファンの一人である自分が、

どんなことをやってでも、これを広める。

その強い想いが、きっといつか、社員も、お客様も巻き込んでいくと信じていた。

 

将来の目標を同じとするチーム作り

ヤッホーブルーイングの社長に就任し、

井手氏は高い目標を掲げ、会社の成長を目指した。

ビール業界のシェア1%をとるという高い目標を掲げた。

 

しかし、昔の井手氏と同じように、

社員たちはどこか他人事として捉えている傍観者であった。

 

自分はどうすればいいのか。社員のマインドを変えるにはどうすればよいのか。

その答えを見つけるため、楽天のトップセミナーに参加した。

 

しかし、そこで言われたことに衝撃を受ける。

 

社長がやると決めたらやれないことはない。

社員に対する不満は、社長自身が出来ていないことの合わせ鏡だということ。

まずは社長自身が変わらなければ、社員は変わりはしないということだ。

 

このセミナーをきっかけに、

井手氏は人の心を動かすということ。

つまり、同じ方向を向くチームを作ること。

 

チームビルディングに注力していくこととなる。

 

また、チームビルディングを始める傍ら、

自分たちの会社のミッションを定めた。

社員全員が向く方向を会社として、明確化したのである。

画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、

新たなビール文化を創出する。

そして、ビールファンにささやかな幸せをお届けする

 

ビールに味を!人生に幸せを!

 

勿論、いままで勤めていた従業員には、

ミッションやビジョンに共感できない人もいた。

 

 もちろん、徹底的に向き合ったら、

その人たちが退職してしまうのではないか、そう思っていた。

その人たちの人生に、悪い影響を与えてしまうのではないかと心配していた。

 

しかし、楽天創業メンバーの小林正忠氏の話を受け、

中途半端に、方向性の合わない社員に付き合わせることのほうが

お互いに不幸になるということを理解した。

 

こうして、ヤッホーブルーイングは、

自分たちらしい会社へと血を入れ替えていったのである。

 

お客様は仲間

自分たちが自分たちらしく、

大切にしていることを失わずに、

社員全員で同じ方向を向き進んでいく。

 

本当の意味でチームビルディングが出来ていると、

ファンになってくれている人は多くいる。

 

ファンとなったお客様は、実は繋がりを求めている。

 

ファン同士も勿論であるが、

会社とお客様との間の繋がりである。

 

「知的な変わり者」である彼らのもとに、

「知的な変わり者」であるお客様が集まってくる。

 

社員、提携先、お客様も含めて、

一つのチームになるためには何が必要なのか。

 

それを考え、行動に移していく。

それこそがヤッホーブルーイングが作り上げてきた企業価値であり、

他社には簡単にマネできない強みなのである。